ずいぶん前になるが、「タラバガニが養殖できないのは、卵から親ガニになるまでに20年かかるから」という話を訊いたことがある。それを受けて昔、こんな話を作った。

孵化したばかりのタラバガニを売り出す業者が現れた。ターゲットは出産祝いの飼育用。子供の成長とともにタラバガニも大きくなっていく。「タラちゃん」という名前を付け、物心ついた頃から熱心に世話を続けてきた息子は、自分がハタチになった日に水槽が空になっていることに気づく。階下からは母親の「ご飯よ〜」の声。その日の夕飯はカニづくしだった。

で、今日になってふと、事の真偽を確かめたくなった。タラバガニの養殖は本当に不可能なのか? また、親ガニになるまでには本当に20年もかかるのか?

調べてみたところ、こんなニュース記事を見つけた。ソースは2009年1月12日付の北海道新聞だが、同新聞のサイトには当該記事が見つからないので全文引用しておく。

タラバガニ増殖、膨らむ期待 室蘭道立栽培水試 幼生10万匹誕生

道が本年度、道立栽培水産試験場(室蘭)で始めたタラバガニの増殖事業で、卵が次々とふ化し、10万匹以上の幼生が誕生している。同水試は5年間かけて、幼生を確実に育て稚ガニを安定して生産する技術の確立を目指す。稚ガニの放流などを通じ、資源回復につなげる最終目標に向け、第一歩を踏み出した。カレイやメバルなどの稚魚が、すくすくと育っている同水試の親魚棟。この一角の水槽内にびっしりと、体長1〜2ミリの茶色い生物が動き回っていた。稚ガニになる前のタラバガニの幼生だ。「カニの生態は分からないことも多く、手探りですが、今のところ順調です」。飼育担当の田村亮一さん(39)は笑顔を見せる。同水試は昨年夏から秋にかけ、網走漁協から入手した受精卵を抱いた親の雌ガニ8匹を水温5.5℃と10℃の水槽で飼育、ふ化を待った。10℃の方が昨年12月22日から、5.5℃の方が今月5日からふ化を始めた。このまま順調に脱皮を重ねて育てば、春にはカニの形に近づいた稚ガニに育つ。親ガニになるまでにはさらに6年程度はかかるという。 これまでの研究で卵がふ化する温度や、幼生の好む餌が徐々に判明してきた。親ガニもイカやハタハタ、シシャモなど何でも食べるが、「同じ魚を続けて食べるのを好まないグルメ」(田村さん)という思わぬ発見もあった。 当面の課題は、幼生を確実に稚ガニに育てることだ。幼生は現在、1日に100〜200匹が自然死しており、その原因は分かっていない。2012年度までにこうした謎を解明し、幼生の育成技術確立を目指す。 タラバガニの道内漁獲量は06年、1997年の約半分の235トンに低迷。ロシアからの輸入も資源枯渇などで減り、増殖技術への期待は大きい。同水試の斉藤節雄生産技術部長(53)は「将来的には、稚ガニを放流したり、卵から親ガニまで育てる実験に挑戦し、道内水産業の振興に貢献できれば」と話している。

ありゃ、20年じゃなくてたったの6年だったか。ともあれ、人工的に幼生を稚ガニに育てること自体が非常に難しいわけね。道立栽培水産試験場の今後に注目したいと思う。

あ、僕自身は全然カニ好きでもなんでもないんですが。