そういえばというか、僕がTwiterを始めた(正確には一度登録したまま放っておいたのを復活させた)きっかけは、当時、ライターの友人がハマっていたツイノベことツイッターノベルだった。ツイッターノベルとはその名のとおりTwitter上で展開する小説のことだが、ハッシュタグ含めて140字という制約の中でいかにストーリー(とか起承転結とか)を織り込むことができるかという、なかなか興味深い試みだった。ともあれ、Twitterアカウントをお持ちの方はハッシュタグ「#twnovel」で検索したほうが概要がつかみやすいと思う。

そのツイッターノベルで、かつて以下のようなツイートをしたことがあった。

「そちに褒美をとらす。なんなりと申すがよい」
「この将棋盤の最初のマスに米を一粒置いてください。次のマスには二粒、その次のマスには三粒……と、すべてのマスに置かれた米をいただきます」
「欲がないのぅ。それじゃたったの3241粒じゃぞ」
「あれれ、どこで間違ったんだ?」

数学パズルの類が好きな人なら、すぐに元ネタがお分かりかと思う。1627年(寛永4年)に吉田光由が著した江戸時代の数学書「塵劫記」に掲載されている、豊臣秀吉と曽呂利新左衛門の逸話である。ものすごく大雑把に紹介すると、まず、秀吉が新左衛門に褒美をやろうとして何が欲しいか訊ねる。すると新左衛門は「初日は一文から始まり、翌日には二文、その翌日には四文と、倍々にして30日間ください」と答える。秀吉は「欲がないのぅ」と笑って承諾する、と。

いわゆる等比級数の話ですね。2日目が二文だからこれを21と考えれば、30日目にもらう額は229=5億3687万912文になる計算。当時の貨幣価値は不明だが、江戸時代の一文が大体10円ぐらいだったらしいので、この時点ですでに大富豪になれる額だってことは間違いない。正確には日々もらう分もあるから、1+21+22+23+……+228+229=10億7374万1823文となる。

この「塵劫記」の逸話はいろんなバージョンがあり、先のツイッターノベルで僕がネタにした将棋盤バージョンは中でもメジャーな存在。僕の記憶が確かならば、アニメの「一休さん」にも同じエピソードがあったと思う。「塵劫記」がお金(文)と日数なのに対し、将棋盤バージョンは米粒と将棋盤の枡目に置き換わっており、こちらのほうが米粒という極小単位がスタートラインであるぶん、等比級数のとんでもなさがよく伝わる例に仕上がっていると思う。

将棋盤には9×9=81の枡目がある。ということは、もらえる米粒の数は1+21+22+23+……+279+280となる。お金じゃなくて米粒だから大したことないだろうと思いがちだが、実際に計算してみると、これはもう2𥝱とかいう大数単位になる。ちなみに「𥝱」の1000ぶんの1が「垓」で、その1000ぶんの1が「京」、そのまた1000ぶんの1が「兆」ね。

一合枡の米粒の数は6482.7粒と言われている。で、1石が1000合。大名の石高でよく知られる百万石というのは、米粒の数に換算すると約6,500,000,000,000=6兆5000億粒ってことになる。兆という大数が付いてはいるが、先の将棋盤のほうは𥝱だからその10億倍のオーダー。ネットで調べたところ計算した人がいたので引用させていただくと、百万石の国が約3729億6985万も必要になる量らしい。いくら秀吉でも絶対に無理だってこと、分かりますよね。