50歳に手が届きそうな年齢になってきたので、さすがに避けて通れなくなってきたのが老眼。とはいえ、仕事で四六時中見ているパソコンの画面の文字は割と小さくても平気だったりする。だから余計にというか、久々に文庫本のページを開いてみて愕然とした。まったく読めないわけではないが、どうにも文字の輪郭がボヤけて視認しづらく、ついつい本を遠ざけてしまう始末。

ここでふと思った。パソコンの画面で普段もっとも見ているであろう文字はテキストエディタのそれだと思われるが、これって文庫本の本文よりも小さいのだろうか?

筆者はかつて出版業界の末席にいたので、印刷物の文字サイズは見た目で大体分かる。件の文庫本の本文は(おそらく)12級というサイズだと思われる。一般には「級」という単位はピンと来ないと思うが、級数に0.7114を掛けた値がポイント数なので、12級=8.5368ポイントになる。

しかしながら、である。ワープロソフトなどで実際にフォントサイズを指定してみると分かると思うが、8ポイントの文字はずいぶんと小さかったりする。まさかこの大きさが単行本の文字とほぼ同じだとは到底思えないだろう。それもそのはず、パソコンのディスプレイに関して言えば、印刷物で用いられる文字サイズとは「見た目の大きさ」が異なるのだ。えっと、本筋から大きく逸脱するおそれがあるので、いわゆるWYSIWYGとかの話は割愛しますね(興味がある人は各自で調べてください)。

印刷物における1ポイントは72ぶんの1インチ(=0.352778mm)だが、今のパソコンに表示されている1ポイントはそれよりも小さい。パソコンなどのディスプレイ装置においては、ポイントという単位はピクセルに等しいので、以降は1ピクセル=1ポイントという前提で話を進める。

調べてみたところ、僕が使っている13インチのMacBook Airのディスプレイ(以下、画面)は127ppiだそうだ。ppiとは解像度を表わす単位で、pixel per inchの略。その名のとおり、1インチ(=25.4mm)あたりのピクセルの数である。それが127ppiということは、25.4mmの中にピクセルが127個あるわけだから、25.4÷127=0.2で、1ピクセルのサイズは0.2mmとなる。

印刷物の1ピクセルが0.352778mmで画面の1ピクセルが0.2mmということは、印刷物の文字のポイント数に1.8を掛ければ、画面におけるほぼ同じ見た目の文字のサイズになるということ。文庫本の本文は約8.5ポイントなので、8.5×1.8=15.3、つまり画面における15.3ポイントの文字とほぼ同じ見た目ということになる。あれっ、15ポイントの文字って、ずいぶん大きくない?

ここまで書いて思ったけど、紙とディスプレイという機構がまったく異なるデバイス(?)を単純に比較したり、フォントのウェイトやファミリー(ゴシックとか明朝とか)の違いを度外視したこの考察自体、かなり公正さに欠ける気がしてきた。まぁとにかく、パソコンのディスプレイなら全然平気な文字サイズでも、印刷物になるとそうでもないことはよく分かりました、はい。