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Mar
24
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『NINE』

今後、このジャンルを担当する監督は大変だと思うよ。だって、コイツを真似れば二番煎じ呼ばわり、過去の方法論を用いれば化石扱いされるわけだから。

2003年当時、某雑誌に書いたロブ・マーシャル監督作『シカゴ』のレビュー原稿の一部である。7年を経た今もこの気持ちは変わらない。むしろより強く思うようになったとも言える。『NINE』を観たからだ。

彼が『シカゴ』で打ち出した「ミュージカルと映画の新しい〇〇」は、この『NINE』で完全に結実した。〇〇にはいろんな言葉が入るだろう。スタイルやメソッド、シナジーなんてベタなもので構わないが、とにかくこの瞬間にいきなり完成形になったのだ。

とはいえ、だ。『シカゴ』の分かりやすいプロット(悪女たちのサクセスストーリー)に比べ、今回のそれがややとっつきにくい感じは否めない。名声は得たが愛に飢えた男の苦悩だからね。ショービジネスの裏でうごめくインモラルな世界。男は眉間にシワを寄せて頭を深く垂れ、女は顔に嘲笑を浮かべながら涙を頬につたわせる。そんなキャストたちの「心の吐露」が、まったく逆のテンションである「ミュージカルのワンシーン」として挿入されていく。チアフルとナーバス、ポジティブとネガティブ、ハイとロー……。これぞコントラストの妙、である。

そして、だからこそ、ラストシーンの爽快感は何事にも代えられない。むしろ作品全体がこのラストに向かっての緩やかで着実な助走のようにも思えた。大満足、である。

この週末はアクティビティ低めだったので、箇条書きね。

  • 点滴と採血のためクリニックへ
  • 映画『インフォーマント!』鑑賞
  • 「TwitterNight vol.4 ツイッター本著者と 2009年のつぶやき納め」 at ロフトプラスワン

あれ、後は食事ぐらいしかトピックがないや。

『インフォーマント!』は事前情報ゼロの状態で観たんだけど、あんまり楽しめず。実在の人物をベースにしているらしいが、ソダーバーグ監督が「これを映画化するときっと面白いはずだ」と舞い上がってしまった感が強いというか、『チェ』2部作で言えば2作目みたいな失速感。そういう意味では、監督は違えど先週観た『イングロリアス・バスターズ』も同じ。

そういえば『ソウ6』もやや未消化感が残る出来だったし、最近劇場に足を運んだ作品はどれも不発な気がする。未見の『パブリック・エネミーズ』と『アバター』はどうかしら?

あ、ムーア兄貴の『キャピタリズム マネーは踊る』も観なきゃだわ。

じつは先週の水曜日に観たんだけど、なかなかいい作品でしたね。世間じゃサンシャイン繋がりの同じ制作陣ということで『リトル・ミス・サンシャイン』と比べられがちだけど、ターゲットは全然別物だし作風も少し地味めです。

全体としてはなんというか、負け組の視点で語られる「生きる希望」とか「大切な人たちとの絆」みたいな感じか。とはいえ、お仕着せや浮ついた感じはない。あんまり「リアル」という言葉は使いたくないが、かつての同級生が幸せ(そう)な生活をしているのを目の当たりにしたシングルマザーのヒロインが、愛想笑いで悔し涙をグッとこらえるという図式も、なんだか生々しいというか、アラサーとかアラフォーと呼ばれる女性客の共感を……って、これじゃなんだか後ろ向きな映画っぽいな。つまりアレだ。そんな負け組さんたちが急に幸せになったりしないところが逆にいいというか、制作側のスタンスに好感が持てたというわけ。

一発逆転とか底抜けにハッピーな結末は待っていないけれども、なんとなくメーテルリンクの青い鳥を見つける話みたいな人生訓なんかも含まれていて、最後には「生きていくことは簡単じゃないけど、言うほど捨てたもんでもないか」といった「等身大の悟り」の境地(ってほどじゃないけど)に辿り着ける「インスタントな処方箋」のような映画でした、はい。

超有名ドラマのオブライエンさんも出演しているが、個人的には片腕の清掃用品店店主ウィンストンを演じていた、クリフトン・コリンズ Jr.がお気に入り。この人、『カポーティ』の死刑囚役が記憶に新しいけど、IMDbによれば「エイリアス」にも出ていたらしい。あと、エミリー・ブラントが扮したノラは、なんとなく飲み屋で気が合いそうな感じがした。もひとつついでに全然関係ないけど、エイミー・アダムスは若い頃のケヴィン・ベーコンに似てると思う。

そういえば、ずいぶん久しぶりの「れびゅう」カテゴリでした。

思うにジャック・ブラック(JB)の芸は名人級だが、そう何回も見るもんじゃないかな、と。確かに『愛しのローズマリー』と『スクール・オブ・ロック』は最高だった。僕自身、この2本の主演作で興味を持ち、彼のファンになったのも事実。順序的には逆になるけど『ハイ・フィデリティ』の助演も良かった。いそうだもん、あんな感じのオタク店員。

しかしながら、『テネイシャスD』はあんまりいただけなかった。プロットはドンピシャだしJBもハマり役だったと思うのだが、放っておいたらどんどん調子に乗る(いい意味でも悪い意味でも、ね)JBに対し、演出サイドがコントロール不能に陥っちゃってる感じがしたんだよなぁ。面白いんだけどあんまり笑えない、みたいな。

とはいえ、JB自身を嫌いになりたくない気持ちがあるのと、ミシェル・ゴンドリーの手腕に期待し、観てきましたよ、『僕らのミライへ逆回転』……って、なんじゃこの邦題は(原題は『Be Kind Rewind』。ちなみに意味は「巻き戻してご返却を」)。体が磁気化した男のせいですべてのビデオソフトの中身が消えてしまったことを機に、彼とレンタルビデオショップの店員が自作自演で名作や旧作映画を撮るハメになる、というハチャメチャなお話ね。

もちろんというか、人騒がせなジェリーの役がJB。一方の店員マイク役は『16ブロック』のモス・デフ。で、肝心の中身だが、確かにJBは本作でも調子に乗っている。でもそれを、優男モス・デフがいい感じに吸収している。それでもJBのアクの強さは強烈だ。例えるなら「満腹時に嗅がされるジャンクフードの匂い」みたいな感じか。さすがのゴンドリー監督も、やや持て余している様子が感じ取れたりもする。中盤あたり、ちょっとタルくなってくるし。

でもね、終盤で一気に巻き返したというか、いい意味で期待を裏切られたというか、トータルで「いい映画だったなぁ」とか「映画っていいなぁ」みたいな気にさせる素敵なエピローグに脱帽。JBが生理的に嫌いという人を除き、映画を愛する御仁は観たほうがいいですよ。

オフィシャルサイト
本国のオフィシャルサイトの「YouTube Sweded」(必見!)
ココでもずいぶん前に取り上げてましたね

この週末は映画を観られなかったが、先週は平日に『アクロス・ザ・ユニバース』を鑑賞。ぶっちゃけ、どうってことないストーリーだが、いちいちビートルズの楽曲に乗せてミュージカル仕立てにされると、どうにもドラマチックになってしまうから不思議。結果、いい映画を観たような気分にさせられたから、なかなかの佳作なのかもね。

サントラの中でお気に入りはデイナ・ヒュークスの「ヘルター・スケルター」とボノ&シークレット・マシーンズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」かな……と、これ書いてて思い立ったので、早速、Amazonにてサントラを購入。

『アクロス・ザ・ユニバース』公式サイト

う~ん、面白いことは面白いんだけど、ブラックユーモアと下品をはき違えている感じ。日本人にはピンとこないエスニックジョークも多いし。

オフィシャルサイト

ずいぶん前にシネフィル・イマジカで放映されていた映画『サンダーパンツ!』を、昨夜観た。いやはや、かなり馬鹿馬鹿しいけど、面白いわ、これ。

コメディ作品としての満足度は僕が保証するので、ここでは小ネタを2つほど。

まず、作品に登場するクルマが、ある1台のアメ車を除いて全部Mini。色も全部同じアーモンドグリーン。というか、作品全体の基調色がグリーンなのですね。ナンバーをいちいちチェックしなかったけど、おそらく5~6台のMiniをエキストラ(?)的に使い回してますよ、きっと。

それから、天才科学少年のアラン役を演じているのは、『ハリー・ポッター』シリーズのロンことルパート・グリント。昨晩の時点ではまったく気づかなくて、今日調べてみてかなり驚いたって話ね。

オフィシャルサイト(日本公開は2003年10月)

試写を観てから1週間ぐらい経ってしまったが、一応レビューを書いておく。いや、一応っていうのはなんだか不本意だな。僕の場合、傑作ほどすぐに感想が湧いてこないタチだったりするので、ドンピシャな作品はどうしても筆(?)が遅れがちなのである。

まず最初に言っておきたいことがある。「ファンタジーなんて女子供の観るものだ」と決めつけている御仁は、観なくてよろしい……というのは言葉のアヤだが、そんな風に決めつけちゃってるオトナの皆さんこそ、あえて、騙されたと思って、ぜひ劇場に足をお運びいただきたい。かつては何にでも首を突っ込みたがる好奇心旺盛な子供だった時代を思い出して、ね。

世界中で飛ぶように売れているウォンカのチョコレート。このあまりにも有名なチョコレートの工場には、15年間誰も入ったことがなければ工場から出てきた者もいない。ある日のこと、お菓子の天才発明家でも知られている経営者のウィリー・ウォンカ氏が「ウォンカ製の板チョコに入っているゴールデン・チケットを引き当てた5人の子供に工場見学を特別に許可する」と発表したからさぁ大変。世界中の子供も親もチケット争奪戦にやっきになっていた。工場のある町のはずれのボロ家に住むチャーリー少年も、このチケットを心から欲しがっていた。彼は両親と両祖父母の7人家族で相当な貧乏暮らしをしていたが、誰よりも優しくまっすぐな少年だった。

ストーリーのイントロ部分だけ訊いたら、おそらくこのチャーリーがチケットを引き当て、最後には心の綺麗さゆえに最大の恩恵に与るのだろう、みたいな展開が容易に予想できる。確かにそのとおりの展開だ。が、そこはやはりブラックユーモアの鬼才ティム・バートン監督と、希代の個性派俳優ジョニー・デップとの強力タッグ。ただ甘いだけのファンタジーで終わらせるわけがない。世界中から選ばれた5人の子供たちが体験するチョコレート工場の中身は、大のオトナがワクワクドキドキしながら笑い転げる、まさに夢の工場そのものであった。

登場人物で言えば、まともなのは語り部的存在のチャーリーぐらいか。彼以外の見学者は、いずれも一筋縄ではいきそうにない少年少女たち。食い意地の張った肥満児、大金持ちの家のワガママ娘、何でも一番じゃないと気が済まないおてんば少女、大人顔負けの論理的思考を持つゲーム少年……。それに輪をかけて奇天烈なのがデップ扮するウィリー・ウォンカ。子供たちが若干背伸び気味なのとは対照的に、夢見がちな子供がそのまま大人になったようなウォンカ氏の、突拍子もない行動と言動から目が離せない。まぁキャラ的にはマイケル・ジャクソンみたいな感じか。そういう意味では、工場の中身もネバーランドそのもの。観ている側も大仕掛けのアトラクションを疑似体験しているような気持ちになれる。こんな遊園地があったら、入場料が10万円でも行くね。

あ、そうそう、彼の工場で一所懸命働く小さなスタッフ、ウンパ・ルンパ(『ビッグ・フィッシュ』にも出演していたディープ・ロイが1人20役を熱演!)たちの一糸乱れぬダンスシーンも見どころのひとつ。

バートンの作品の中では珍しくギャグとエンタメ色が強調された感じの作風だが、最後にはちゃんとホロリとさせる心憎い演出も用意されている。マイベストワンムービーは今年も、バートンが2年連続で獲得かな。

日本公開は9月10日です。

オフィシャルサイト

ハイバジェット監督、マイケル・ベイによる近未来SF。主演はユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソン。7月12日、マスコミ試写にて鑑賞。

秩序があって美しいが内面的にはかなりデストピアな近未来。その日常(我々現代人にとっては非日常だが)を淡々と描きながらも、そこかしこに「おや?」と思わせる部分が見え隠れしている。物語が進むにつれて、何かとてつもなく大きなカラクリが存在していることが少しずつ明らかになっていく……とまぁ、皆様もうお気づきのとおり、映画のメソッドとしては『マトリックス』にかなり近いものがある。クライマックスにド迫力のカーチェイスシーンが用意されていることもあり、言わば『~リローデッド』と『~レボリューションズ』の要素も含めてギュッと凝縮したような感じ。いや、凝縮というには長すぎか。

良くも悪くもマイケル・ベイ作品ではある。徹底的にお金をかけて作られた、きわめてアメリカンなエンタメ映画。この「アメリカンな」という部分が曲者で、良く言えばダイナミックでストレートなアドレナリン系、悪く言えば大ざっぱでご都合主義なストーリー展開といったところか。一応の判断基準として『アルマゲドン』がアリだった人は、こちらにも文句は言わないような気がする。スティーブ・ブシェミも出てるしね。

とはいえ僕的には、近未来SFというジャンルはそれだけでアリだったりするので、予告編を観て食指が動いた人にはオススメしたいと思う。ただし、テレビCMなどで流れている予告編は惹句も含めてかなりネタバレなように思う(ゆえに、ここでも詳しいストーリー解説は避けた)。この手の映画は、事前情報がない状態で観たほうがより楽しめると思うんだけどなぁ。というかこれって、映画全般に言えるジレンマなんだけどね。

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ペンギンは南極大陸にいる。正確に言えばガラパゴス島にもいるが、ほとんどは寒い場所に生息している。だから勝手に思いこんでいた。彼らはどんな寒さもへっちゃらなんだと。

リュック・ジャケ監督のドキュメンタリー『皇帝ペンギン』(7月16日より恵比寿ガーデンシネマにて先行上映。7月23日より全国拡大ロードショー)をマスコミ試写で観て、ペンギンに対する考えがガラリと変わった。というか、南極のペンギンも生死を分かつような極寒の環境にさらされるということを、この作品を通じて初めて知ったのだ。

南極大陸における極寒とは、マイナス40℃。しかも、風速250km/hのブリザードが猛烈に吹きすさぶ。人間のように防寒具もなければ、雨露をしのぐ家もない。ペンギンの中でも最大種である皇帝ペンギンは、そんな極限状態に長期間我が身をさらす。なぜか? 子供を育てるためである。

南極に冬の気配の訪れを感じ始めた頃、彼らはまるで神に導かれるかのように一斉に行進を始める。ペンギンは普段、もっとも生活のしやすい「海の近く」に住んでいる。彼らは飛べないかわりに泳ぎがうまく、魚や動物プランクトン、イカなどを捕食するからだ。そんな自由と安息の場所を後にし、100km近い旅を経て「営巣地」に着いたペンギンたちは、新しい命を授かるためのパートナーを見つけ、求愛のダンスを始める……。

驚くべきは産卵後だ。卵を孵す役割はメスではなくオスのほう。産卵で体重が激減したメスは、卵が孵化するまでじっと耐える体力はない。そのかわりにというか、これから生まれてくるヒナのためにエサを調達する役割を担う。卵を抱いてじっと耐えるオスと、卵が孵るまで旅に出るメス。これだけでも野生の神秘性を感じずにはいられないが、その期間が120日にもおよぶと訊けばさらに驚きである。しかもその間、エサは一切口にしない。オスだけの集団絶食生活の始まりである。なにしろここは、海から離れた場所だからどうしようもないのだ。

極寒に耐える高性能カメラを開発し、8080時間もの撮影時間が費やされた壮大な生命賛歌。フランス人俳優によるセリフはちょっと余計かなとも思えたが、編集も演出も、さらには音楽も申し分ない。何より、嘘偽りのないリアル映像の数々が、観る者にストレートな興奮と感動を約束してくれる。同種のドキュメンタリー映画『ディープ・ブルー』のDVDが今、かなりの人気を博しているそうだが、この夏はこちらも必見である。

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